東京高等裁判所 昭和28年(ネ)427号 判決
控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張は、被控訴代理人において「一、本件土地は被控訴人の先代柏井嘉一郎が建物所有の目的で明治三十四年中訴外浄運寺から賃借し当時木造トタン葺二階建住家一棟建坪三十四坪一合五勺外二階坪十四坪七合五勺及び付属建物木造トタン葺平家物置一棟建坪一坪五合を建設し、右建物は昭和七年一月十五日被控訴人のため所有権保存登記をした。従つて建物保護に関する法律により賃借権は保護されるから控訴人に対抗できるものである。右建物は昭和二十年七月頃強制疎開命令によつて取り毀したが、その材料一切は何時でも再建できるよう現在保管している。二、控訴人が訴外浄運寺から昭和二十八年二月二十三日本件土地を買い受けたとの点は否認し控訴人主張のような所有権移転登記がなされたことは認める。仮りに控訴人主張のように売買契約が締結されたとしても訴外浄運寺は右売買について本山増上寺の許可を受けるに当つて被控訴人の賃借権を引き続き存続させる意思が無いのにかゝわらずその賃借権の存続を条件として許可申請をなしたものであつて右許可申請手続は違法であるからこれに基ずく許可も効力なく従つて右売買契約は無効である。また仮りに右売買契約が有効であるとしても控訴人は本件土地上には被控訴人が建物所有の目的をもつて賃借権を有することを知りながら右土地の所有権を取得したものであるから前所有者の承継人として賃貸借上の権利義務を承継するものというべきである。控訴人はいわゆる悪意の取得者であるからこれを保護する必要はない。なお賃借権は賃借人が賃借物を占有しこれを使用又は収益する権利であるからその性質は債権ではなく物権である。以上の理由により被控訴人と訴外浄運寺との間の本件土地賃貸借は控訴人に対抗できないとの控訴人の主張は理由がない。三、次に控訴人の主張する賃貸借契約解除は主張のような解除の事由が無いから効力を生じない。すなわち(イ)被控訴人が終戦後直ちに建物建設に着手しなかつたことは資金に窮していたため遅れていたものであるが、漸くその資金を入手することができたので、今や一日も早く建築しなくてはならぬ状況に迫られているものである。(ロ)浄運寺に対しては賃料の延滞は無い。(ハ)本件土地を訴外町田に転貸したことはなく、また転貸したとしても浄運寺の承諾を得ている。(ニ)被控訴人の現住宅は被控訴人において余儀なく買い受けたものであるが、今なお代金は納付しておらずもちろん定住の目的もなく場所としても被控訴人の営業上適当の場所ではない。四、次に本件宅地は終始被控訴人が占有していたものである。しかるに控訴人は不法にも被控訴人の占有を侵害して本件土地に岩佐商事株式会社という標札を立て建物築造に着手しようとして来たから本件占有保持の訴を提起したものである。控訴人は、本件土地の占有者は訴外岩佐商事株式会社であつて控訴人ではなく原審において控訴人が占有したと述べたのは錯誤に基ずくものであるからこれを取り消すと主張するけれども、控訴人は岩佐商事株式会社の名義を借りたもので被控訴人の占有を侵害したものは控訴人であつて、控訴人の右自白の取消に関する主張には同意しない。」と述べ、控訴代理人において「一、被控訴人先代嘉一郎が訴外浄運寺から被控訴人主張のような条件で本件土地(ただし坪数は三十二坪である。)を賃借していたこと、被控訴人先代嘉一郎が大正十四年二月二十八日死亡し被控訴人が相続によつて右賃借権を承継したことは認め、その主張のような建物を建てかつ保存登記をしたことは不知、昭和二十六年六月三十日明渡の請求をしたことは認め、被控訴人が占有使用して今日に及んでいることは否認する。昭和二十六年六月二十九日以降本件土地に立ち入つたことはあるがこれは当時の占有者町田栄司の承認を得た上なしたことであり、右町田栄司が立ち退いた後は正当な占有権者としてゞあつて被控訴人の占有を妨害したことにはならない。また被控訴人主張のように控訴人が建物築造の準備をしたことはない。二、原判決の後である昭和二十八年二月二十三日控訴人は本件土地を訴外浄運寺から買い受け同月二十六日所有権移転登記手続を了したのであるから、仮りに被控訴人が本件土地を同訴外人から賃借しているものとしても、昭和二十八年二月二十七日以降はその有する賃借権をもつて控訴人に対抗できないから、本訴において右賃借権の確認を求める法律上の基礎を失つたものである。よつて被控訴人の賃借権の確認を求める請求は失当である。被控訴人は控訴人が本件土地を訴外浄運寺から買い受けるために同訴外人が本山増上寺から得た譲渡許可は無効であると主張しているが右主張は時機におくれているから却下すべきものである。三、また仮りに被控訴人が控訴人に対して右賃借権の確認を請求できるものとしても、被控訴人は昭和二十五年十二月二十日頃原判決事実摘示のように、浄運寺から本件賃貸借契約を解除されたものである。右解除権行使が法律上の効果を発生しなかつたとしても、浄運寺はその後被控訴人に対して昭和二十六年六月二十七日付翌日到達の書面によつて本件土地を無断で第三者に転貸しているとの理由で契約解除の意思表示をしたから、右賃貸借は解除されたものである。右転貸借は賃貸人である浄運寺をして信頼を失わせる性質のものといわなければならない。すなわち当時被控訴人は(イ)終戦後もながらく桐生市の商業の中心地にある本件土地を空地のまゝ放置し建物を建設しないし、(ロ)昭和二十一年六月一日本件土地を賃料一箇月金十円六十銭毎月二十五日限りその月分を支払うこと、賃料を一回たりとも延滞したときは契約を解除することゝして新たに訴外浄運寺と賃貸借契約をしておりながら、昭和二十五年十月以降賃料を延滞しており、(ハ)本件土地を訴外町田栄司に賃貸しており、同人は右地上に小屋を建て夫婦起居し電燈四本引き込み地上に金二十一万円以上と見積られる瀬戸物を一杯に拡げ使用人を雇つて盛大に営業を営み、(ニ)被控訴人は現住所に一戸を構えて営業をなし、その住宅を買い受けてここに定住する計画を立てゝおり、(ホ)被控訴人は本件借地権を他に処分しようと奔走しつつあつて、価格金二十一万円で桐生市内某会社に売買を申し入れ、また桐生村関口菓子問屋に借地権担保で金十万円借り受けたりなどしている。かような事情にあるから浄運寺としては信頼を置ける賃借人ではなかつたので、浄運寺住職は度々被控訴人に直接瀬戸物屋を立ち退かせるよう交渉したがこれに応じないので遂に昭和二十五年十二月二十日頃契約解除をなしたものである。仮りに右解除が無効であるとしても右解除通知は転貸することに異議を述べているものであるから、被控訴人としてはすみやかに転借人を立ち退かせる義務があるにもかゝわらず、被控訴人は依然として訴外町田栄司に使用させているので、昭和二十六年六月二十七日賃貸借契約解除の意思表示を予備的にしたものである。従つて被控訴人の賃貸借契約存在確認の請求はいずれの点から考えても失当である。四、次に控訴人は本件土地を占有するものではなく、訴外岩佐商事株式会社が占有しているのであるから、被控訴人の占有保持の本訴請求は失当である。すなわち控訴人は昭和二十六年六月二十九日本件土地を浄運寺から他に賃借人はないものとして代金二十万八千円の約定で買い受け、手付金五万円を支払い残額は登記と引替に支払うこととし、代金全額の支払を完了するまでは右土地を賃借することとする契約をした。よつて控訴人は翌六月三十日本件土地の占有者町田栄司に対してその旨を告げ明渡を求めたところ、同人はこれを承諾した。控訴人はかねて右土地を入手した上、岩佐商事株式会社に貸して同会社をして営業所建物を建設させる考であつたので、右町田栄司同意の上で直ちに岩佐商事株式会社に土地の外壁を建設させた。そして同年七月十五日頃町田栄司は右土地を控訴人に引き渡した。控訴人はその後間もなく岩佐商事株式会社に右土地の占有を移し同訴外会社は本件地上に営業所を建設することとなつた。原審において控訴人は本件土地の占有を認めたが、それは控訴人が代表取締役をしている岩佐商事株式会社が占有していると述べるべきを誤つたものである。従つて右自白は真実に反しかつ錯誤に基くものであるから、これを取り消す」と述べたほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
<立証省略>
三、理 由
一、賃借権存在確認の請求について。
控訴人は「昭和二十八年二月二十三日控訴人は本件土地を訴外浄運寺から買い受け同月二十六日所有権移転登記手続を完了したのである。従つて仮りに被控訴人が本件土地を訴外浄運寺から賃借しているものとしても、昭和二十八年二月二十七日以降はその有する賃借権をもつて控訴人に対抗できないから、本訴において右賃借権の確認を求める法律上の基礎を失つたものであつて、被控訴人の賃借権の確認を求める本訴請求は失当である。」と主張しているので、この点について判断する。
(一)成立に争のない乙第八、第九号証の各記載、当審における証人渡部愛一の証言及び控訴人本人尋問の結果を綜合すれば、控訴人が昭和二十八年二月二十三日本件土地を訴外浄運寺から買い受け同年二月二十六日所有権移転登記手続を完了したことが認められる。右認定を覆すに足る証拠はない。
(二)被控訴人は昭和二十九年五月十七日の当審口頭弁論期日において、「仮りに控訴人主張のような売買契約が締結されたとしても訴外浄運寺は本件土地の売買について本山増上寺の許可を受けるに当り被控訴人の賃借権を引き続き存続させる意思がないのにかゝわらずその賃借権の存続を条件として許可申請をしたものであつて、その許可申請手続は違法であるからこれに基ずく許可も効力なく、従つて右売買契約は無効である。」という新な主張を陳述した。しかしこれに対しては控訴人において時機におくれたものとして異議を述べた。ところで控訴人が前記の本件土地売買に関する主張をしたのは、昭和二十八年六月二十七日の当審口頭弁論期日においてであるが、これに対して右売買の効力を争う被控訴人の前記主張は、その後数回の口頭弁論をへた昭和二十九年五月十七日の最終口頭弁論期日に至つて始めて陳述されたものであることは、記録上明かである。しかも被控訴人が右主張をなすに当りこれが準備のためさして時日を要するものとは認められないから、被控訴人が右主張を前示期日に至つて始めて陳述したのは、被控訴人の故意もしくは重大な過失によつて時機におくれたものであり、かつその主張事実の取調のためには更に日時を要するものである関係上、これがため訴訟の完結を遅延させるものと認められる。よつて右主張は却下すべきものである。
(三)前述のように、控訴人は本件土地を浄運寺から買い受け、その所有権を取得するとともに、これが所有権移転登記を経たものである。従つて仮りに被控訴人と前所有者である浄運寺との間に右土地の賃貸借関係が存続していたものとしても、その賃貸借を新所有者である控訴人に対抗するためには、右土地について被控訴人のために賃借権の登記があるが、もしくは被控訴人が右借地上に登記ある建物を所有していることが必要である。ところがかような登記又は建物のあることについては、被控訴人はなんらの主張もしないし、またその事実を認めるに足る証拠もない。してみると被控訴人は右賃貸借をもつて控訴人に対抗できないものといわなければならない。
(四)ところで被控訴人は右賃借権をもつて控訴人に対抗し得べき事由として種々主張するところがある。しかし(イ)仮りに被控訴人が右借地上に登記ある建物を所有していたとしても、同建物は控訴人が右土地の所有権を取得する以前に既に取り毀されて存在していなかつたことは、被控訴人の自ら主張するところであるから、当時現存しない家屋について建物保護に関する法律の規定を適用してその賃借権を新所有者である控訴人に対抗し得べき限りでない、(ロ)また仮りに控訴人が被控訴人の賃借権の存在することを知りながら右土地の所有権を取得したものとしても、その事実のみによつて直ちに控訴人が前所有者である浄運寺の賃貸借契約上の権利義務を当然承継したものであると断定し得ないことはもちろんである、(ハ)その他被控訴人の主張する事由の理由がないことは、あらためて説明するまでもない。
(五)そうだとすると、仮りに被控訴人が浄運寺に対して本件土地について賃借権を有していたとしても、被控訴人は控訴人に対してその賃借権を対抗し得ないものであるから、被控訴人は本件土地について訴外浄運寺に対して賃借権を有していることを理由にして控訴人に本件土地の賃貸借契約上の義務の履行を請求することはできないのである。従つて仮りに被控訴人が控訴人との間において本件土地について被控訴人の浄運寺に対する賃借権の存在が確認されたとしても、この裁判によつて被控訴人が控訴人に対し本件土地の使用収益を請求する権利を有することが明かになるものでもなく、なんら被控訴人と控訴人との間の本件土地の使用収益に関する賃貸借上の権利関係が確定され、当事者間の賃貸借関係の紛争が解決されることになるものでもないから、被控訴人は本件賃借権の確認を求める法律上の利益を有しないものというべきである。従つて本訴請求のうち右賃借権の確認を求める部分は理由がない。
二、占有妨害排除の請求について。
被控訴人は「被控訴人先代柏井嘉一郎は明治三十四年中訴外浄運寺から本件土地を建物所有の目的で賃借し同地上に木造家屋を所有してこれを占有使用して来たが、被控訴人は大正十四年二月二十八日先代嘉一郎の死亡後相続によつてその賃借権を承継するとともに引き続き本件土地を占有して今日に及んだ。ところが控訴人は右浄運寺から本件土地を買い受けたと称し昭和二十六年六月三十日被控訴人に対しこれが引渡を請求し被控訴人の占有を妨害して右宅地内に立ち入り建物建設の準備に着手した。」と主張するのでこの点について判断する。
被控訴人先代柏井嘉一郎が明治三十四年中訴外浄運寺から本件土地を賃借し木造家屋を所有してこれを占有使用して来たこと、被控訴人が大正十四年二月二十八日先代嘉一郎の死亡後相続によつてその賃借権を承継するとともに引き続き本件宅地を占有使用して来たこと及び控訴人が昭和二十六年六月三十日被控訴人に対してこれが明渡を請求したことは当事者間に争がない。成立に争のない乙第二号証、当審における控訴人本人尋問の結果により真正に成立したと認められる同第三号証の各記載、原審における証人町田栄司、柏井タマ、吉野武雄、永山栄太郎、当審における証人渡部愛一の各証言、原審における被控訴人、控訴人(第一、二回)ならびに当審における控訴人各本人尋問の結果及び検証の結果を綜合すれば、被控訴人は昭和二十五年四月から陶磁器の露天商を営んでいる訴外町田栄司に対し使用料、使用期間等を定めず被控訴人の請求あり次第いつでもその明渡を受ける約定で本件土地を一時貸与する旨の使用貸借契約を結び、右町田は本件地上に雨露をしのぐ程度の堀立小屋を建てゝこれに居住するに至つたが、被控訴人も貸主として依然右土地の占有を継続して来たこと、右土地の所有者である浄運寺は昭和二十六年六月二十七日被控訴人に対し本件土地の明渡を請求したが、被控訴人はこれに応ぜず従前のとおり右町田に使用させて引き続きこれを占有していたこと、控訴人は昭和二十六年六月二十九日浄運寺と本件土地を代金二十万八千円で買い受け代金支払ずみと同時にその所有権の移転を受けこれが登記をなすこととし、その間は右土地を賃料一箇月金二百七十四円二十銭で浄運寺から借り受ける旨の契約を締結したが、現実には右土地の引渡を受けなかつたこと、控訴人は被控訴人が本件土地を浄運寺に返還せず前記のようにこれを使用させていることを知りながら、浄運寺と被控訴人との間の賃貸借は無断転貸により解除された旨の浄運寺の言を信じて同年七月右町田を本件土地から退去させたこと、右土地の外側に木柵が設けられそのため本件土地に対する被控訴人の占有が妨害されていることが認められる。
ところで占有者がその占有妨害の排除を請求し得べき相手方は現在の占有侵害者に限られるのである。よつて右土地の外側に木柵を設置し現に被控訴人の使用を不能ならしめ、その占有を妨害しているものが何人であるかについて考える。この点に関して控訴人は原審の口頭弁論において、控訴人が右町田から本件土地の占有を受け継ぎ爾来現在までこれを占有しているものであると自白したのを、当審における昭和二十八年六月二十七日午前十時の口頭弁論期日に至つて、右自白を取消訂正して、控訴人は右町田から本件土地の占有を受け継ぐと間もなく訴外岩佐商事株式会社にその占有を移転したと述べ、現に被控訴人の占有を妨げているのは、控訴人ではないという趣旨の主張をしている。これに対して、被控訴人には右控訴人の自白の取消訂正に異議がある(弁論の全趣旨、ことに被控訴人の昭和二十八年六月二十七日附準備書面第三項参照)。よつて右自白の取消訂正が真実に反しかつ錯誤に基ずくものかどうかについて判断する。(イ)後記認定のように、本件土地の外側に木柵を設け現に被控訴人の占有を妨げているのは、控訴人ではなく、前示岩佐商事株式会社であるから、控訴人の右自白は事実に反するものと認める。また(ロ)成立に争いのない乙第七号証によると、右会社は資本金三十万円をもつて設立され、爾来控訴人がその代表取締役であつて、役員にも同族のものが多いことが認められる。かような小規模の会社においては、会社とその代表取締役個人とを混同して表現せられ、その間明確な区別を欠くことは往々にしてあり得る事例であるから、本件にあつても、控訴人(被告)及びその代理人が原審の口頭弁論において、本件土地を現に占有するものが控訴人個人であることを自白したのは、叙上のように、かれこれ混同して表現したもので、もとより錯誤に基ずくものと推定するのが相当である。よつて控訴人の右自白の取消訂正は有効である。
よつて進んで按ずるに、本件土地現場の写真であることについて争いのない乙第四号証、当審における控訴人本人の供述によつて成立を認める同第五号証、第六号証の一、二、当審における証人後藤幸吉、渡部愛一の各証言ならびに控訴人本人尋問の結果を綜合すると、控訴人は代表取締役をしている岩佐商事株式会社の営業所を建設する目的でとりあえず自己の名義で本件土地を買い受けたので、右土地が町田栄司から明け渡されるや、右会社は訴外株式会社小川建設にその営業所の建築を請け負わせることとし、昭和二十六年八月まず右小川建設をして本件土地の外側に木柵を設置させ、その柵上に「岩佐商事株式会社建築用地」としるした看板を取り付け、右土地に前記会社が営業所を建設しようとしていることを明示するとともに、何人も同地内に立ち入らぬような措置を講じたものであつて、その木柵等、工事代金四千四百円は当時右会社から前記小川建設に支払われたこと、爾来右会社が現在に至るまで本件土地の外側に木柵を設けて右土地を支配し、被控訴人が同土地を使用占有することを妨げていることが認められる。この点に関する原審における証人永山栄太郎及び控訴人本人の各供述は、その趣旨明確を欠き採用することはできない。その他右認定を覆し控訴人が現に右土地に対する被控訴人の占有を妨げているとの被控訴人の主張を肯定するに足る確証はない。
叙上の認定事実から考えると、本件土地に対する被控訴人の占有を現在侵害しているものは、右岩佐商事株式会社であつて、控訴人でないことが明かである。
従つて控訴人が本件土地に対する被控訴人の占有を妨害しているものとして、同人に対しその妨害排除を求める被控訴人の請求は失当である。
三、しからば被控訴人の本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却すべきものとする。従つて原判決は正当でなく、本件控訴は理由がある。よつて民事訴訟法第三百八十六条、第九十六条、第八十九条に則り、主文のとおり判決する。
(裁判官 浜田潔夫 仁井田秀穂 渡辺一雄)